日暮れて道遠し

博打のこと、借金のこと、その他いろいろ

好きなアーティストであっても、黄金期だけ聴いとけばいい

今から1年半ほど前の2023年10月、ローリング・ストーンズのニューアルバム「ハックニー・ダイアモンズ」が発売された。2016年のカバーアルバム「ブルー&ロンサム」をはさんで実に2005年「ビガー・バン」以来、18年ぶりのオリジナルアルバムである。

先行シングル「アングリー」を聴いて、今回はちょっと良さそうだぞと私も思ったが、やはり概ね好評であり、一部「過去の遺物だとか、金に物を言わせた中身のないアルバム」というような声も聞くが、80年代(90年代?)以降最良のアルバムという評価で定まりつつある。

ただ、私は好きなアーティストだからといって直ぐに(聴く)買うという習慣をもっておらず、このアルバムもしばらくして評価が定まってから聞こうと思っていた。今や音楽はCDでなくデータだし、それもサブスクだからお金をかけずにすぐに聴けるのだが、「無駄な時間を使いたくない」「期待した分がっかりするのが嫌」という理由でその習慣は続いている。

そもそも、私が洋楽を聞き出したのは80年代なのだが、当時の音楽を聴きつつも、メインは70年代のいわゆる「名盤」を聴き漁っていたので、いわば費用対効果の高い名作アルバムばかり聴いていたことになる。

並行して、気にいったアーティストのリアルタイムのアルバムを何度か聴いたのだが、そのアーティストの黄金期のアルバム(いわゆる名盤とされるもの)を聴いた後でそれを聴くことになるので、やはり過去の作品には及ばないと感じることがほとんどだった。

例えばストーンズもそうで、私が初めてリアルタイムで聴いたアルバムは1986年「ダーティ・ワーク」なのだが(ちょっと運が悪すぎるか。)、それまでに聴いていた黄金期の作品と比べるとあまりに酷いものだった。

リアルタイムで(これは名盤)と思えるようなアルバムは、U2ヨシュア・ツリー」(1987年)、プリンス「サイン・オブ・ザ・タイムス」(1987年)、エアロスミス「ゲット・ア・グリップ」(1993年)、ザ・ストロークス「ザ・ニュー・アブノーマル」(2020年)くらいのものだった。

そんなこともあって、「ハックニー・ダイアモンズ」も放置していたのだが、ある時、街をぶらついていると本屋とCD屋が一緒になっているTSUTAYAライクな店をみつけ、何となくCDコーナーを見にいくと、まずはそのコーナーの小ささに驚いた。

80年代の半ば、売れば何百万枚とCDが売れていた頃、ショップはまるで高級ホテルのバイキングのようで、美味そうなものがたくさん並べられ、そして煌(きら)びやかだった。棚にはたくさんのカラフルなCDが並べられ、壁にはボン・ジョビの「Slippery When Wet」のポスターが一面に貼られていた。

それが今やCDは、店の端のほうに追いやられ、隠れるように売られている。それでも平積みにされ鮮やかなPOPが飾られているものもあるが、それは、なんとか48みたいな「全員が同じパートを歌っている」グループであり、洋楽はその隣にほんの少しだけ申し訳程度に並んでいる。その隣は、暖簾のかかった大人のDVDコーナーだ。

その洋楽コーナーには、LADY GAGAらしき文字の背表紙だけが見えるCDが100枚くらいと、わずかに1枚だけ表を見せてジャケット前面が見えるCDがあった。それこそが、ストーンズの「ハックニー・ダイアモンズ」だった。

ちょっと寂しい気持ちになったので、直ぐにアルバムを通して聴いた。うん。いい。ただ、ストーンズのアルバムとしては真ん中かそれより少し下くらいかなぁ。と思った。逆に言うと黄金期の4枚(「ベガーズ・バンケット」(1968年)、「レット・イット・ブリード」(1969年)、「スティッキー・フィンガーズ」(1971年)、「メイン・ストリートのならず者」(1972年))のあまりの素晴らしさが奇跡のように思えた。

やっぱり、いくら好きなアーティストでも、黄金期だけ聞くべきだと思う。

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