漫画家でありタレントとしても活躍する蛭子能収。天然ボケというか空気が読めないというか、全く他人のことを思いやらない、そして思ったことをそのまま言うという特異なキャラがウケて、テレビ界で異彩を放つ私の大好きな芸能人(ほかには高田純次など)の一人である。
マンガのほうは元祖「ヘタウマ」と言われる、稚拙だが味のある絵を描く。内容はエログロ満載で中身は全く無く、夢を元に書いていたり(これは「ねじ式」(つげ義春)に感化されてのことらしい。)自分の気に入らない人間を作中で殺したりというもので、特に読む必要はない。
こういう類のものは、ジャクソン・ポロックの絵と同じで、こっち側で「芸術」として祭り上げているだけのもので、そんなに意味も価値もあるものではない。水木しげるが、つげ作品を絶賛する権藤晋(漫画評論家、編集者)に向かって「おたくもアタマおかしいですナ」と大笑いしたというが、それだ。
ただ、「ねじ式」は私はこの手のマンガにしては珍しく「なんかいい」と感じて、何度も読んでいる。ただ、何かを表現しているとか、こういう解釈ができるなどと感じたことも考えたこともない。なんとなくいいだけだ。
エピソードにも事欠かない蛭子能収だが、何といっても私が好きなのは例の「賭けてもいいです。」である。1998年に麻雀賭博によって現行犯逮捕、約3カ月間タレント活動を自粛した時の話。
逮捕された際に「もう二度とギャンブルはしません。賭けてもいいです。」と、警察官に誓ったという話はもはや伝説である。さらに、この自粛(謹慎)期間中はラスベガスに滞在し、ギャンブル三昧。帰国後は「近代麻雀」(竹書房)に「賭け麻雀を合法化すべき」という記事を書いている。
そして、「女性自身」で連載している「ゆるゆる人生相談」がたまらない。ひとつ紹介してみよう。
【Q】23歳の息子は、この春から東京で生活しています。私はずっと田舎で暮らしてきて、怖い都会で暮らすなんて信じられません。悪い誘惑も人も多そうなので心配です。なんとか連れ戻そうと思っていますが……」(黒い彗星さん・54歳・青森県・自営業)
【A】「冷静になって先を見通せれば、どこでも負けない(競艇の話)」
(蛭子能収)オレも東京はすごく怖いところだと思っています。お金を稼ぐところもいっぱいあるし、成功すればお金はたくさん入ってきますが、稼げなくなったら崖から落ちるようにダメになっていくのが東京です。
オレは長崎の看板店から逃げるようにして上京しましたが、東京には平和島、江戸川、多摩川のほかに、すぐに近くに戸田(埼玉)と競艇場が4つもあって夢の世界だと思いました。
ただ、オレの地元の大村競艇場は、インコースを走る1号艇が勝ちやすくて、配当金は安いけどけっこう当たっていたんです。でも東京にある競艇場ではインコースの選手でも簡単に勝てないから、予想がかなり難しいんですよね。(電話で席を外していたマネージャーが戻って来て「大丈夫ですか?」)
冷静になって、しっかり先を見通す力があれば、どこでも負けないと思います。息子さんも大丈夫だと思って信じてあげたらいいですよ。(マネージャー「よくわからないけど、なんかいいこと言っていますね、蛭子さん」)
引用:「女性自身」2021年9月7日号
お判りのとおり、質問に対する答えにはなっていない。そして、おおよその回答は全て「競艇」の話にすり替わる。
私の好きなやつをもうひとつ。
【Q】「私の姉が新興宗教に入っています。義母が入院したり、子どもがケガをしたりすると、『入信したら、そんな目にあわなかった』と勧誘されます。お金もつぎ込んでいるようなのでやめさせたいと思っていますが……」(ヒロちゃんさん・46・主婦・和歌山県)
【A】「宗教は、自分の頭で考えられない人が頼るもの」(蛭子能収)
最近、競艇の成績がいいんですよ。この前も大村競艇場で15万円も勝ちました。なんとなくコツが見えてきたんです。それがボートの1、2、5、6号艇を組み合わせる舟券「1256のボックス」買い。ピタリと当たるんです。やっとオレにも運が回ってきたようです。
それで新興宗教ですか、ウフフ……。かわいそうですけど、お姉さんとは関係を絶ったほうがいいですね。新興宗教をやめさせたり、説得したりすることなんか考えずに、しばらく放っておいたほうがいいですね。「私はだまされていた」といつか気づくかもしれませんよ。
オレは新興宗教の誘いはきっぱり断っています。自由に生きるために、あれ読めとか教会に行けとか、強制されるのが嫌だからです。宗教は自分で判断できない人が頼るもの。自分の頭で考えられないなんて、何が楽しいんでしょうかね。そもそもオレは宗教観がありませんし、何かにすがろうと思ったこともありません。オレが信じているのは「1256のボックス」だけです。
引用:ネット版「女性自身」蛭子能収のゆるゆる人生相談
これは「蛭子買い」に繋がるいい話です。「蛭子買い」については、後でまた書こうと思う。
もうひとついこう。
【Q】「私は、恋愛小説を書いています。小説家になりたくて、それを目指してがんばっています。蛭子さんにその小説を読んで感想を聞かせてほしいんです。ダメですか? それなら、何かいいアドバイスを!」(苺ベリーズさん・21歳・栃木県・専門学校生)
【A】「本を書こうと思うなら人がやらないことをやるべき」(蛭子能収)
恋愛なんか興味ないし、そもそも字を読むのが嫌いだし……。たぶんオレがその小説を読んでも何にも感じないと思いますよ。
アドバイスですか? オレが漫画を描くときに心がけていたことってありましたっけ?(マネージャー〈以下、マ〉「蛭子さんのデビュー作の『パチンコ』はパチンコ店に辿り着けない男の話で、パチンコ台が一切出てこない衝撃作でしたよ」)
そうそう、とにかく、人がやらないことをやろうと思っていました。チリ紙交換のときも、みんなが行かないようなところで古新聞を探していましたし。あとは関係ないコマに毛沢東とかUFOの絵を入れたり、タイトルを不可解にしたりして、読んでいる人に「?」と思わせようとしていました。
大事なのは、最後まで描き切ることですよ。あとはなんとかなりますよ。(マ「がんばって『認知症になった蛭子さん』も書き切りましたものね」)あ、オレ、その本、書いていないし読んでいません。(マ「著者がそれを言ってはいけません!」)
引用:ネット版「女性自身」蛭子能収のゆるゆる人生相談
youtu.be
言ってはいけないことを平然と言ってのける。私の知る限りではディオと蛭子能収しかいない。憧れるぅ~【関係ないコマに毛沢東とかUFOの絵を入れたり、タイトルを不可解にしたりして、読んでいる人に「?」と思わせようとしていました。】のくだりを読むと、作り手が適当にやっても、読み手が勝手に芸術化してくれるということが良く分かる。
さて、ここで先に触れた「蛭子買い」について少し触れたい。競艇好きには有名な「蛭子買い」だが、これはひとつには「買い目を絞らない多点買い」をいい、ひとつには具体的な出目を言う。その出目は「1256の3連単ボックス」(ゆるゆる人生相談で言ってるやつ)と、235と245の3連単ボックスの合計36点を買うというもの。(うち、245ではなく、246の3連単ボックスと書かれたものもある。)
これは「点数を絞る事も大事だが、それで当たりを逃していては意味がない。トリガミになろうが当てることが大事で、赤字でも負けは少なくて済むし、大穴がくれば一発で取り返せる。」という理由らしい。
3連単の出目は120通りあり、この「蛭子買い」36点は単純計算で36分の120で当たり(的中率30%)、3連単の平均配当は7,000円というから、このままではマイナスになるが、的中率を50%にできれば勝てる計算になる。
荒れそうなレースを選んで蛭子買いすれば、実は有効な買い方かもしれない。しかも6が頭できまれば超万舟になるのは間違いない。また、これから派生して自分だけの「蛭子買い」を作のもアリだ。
私なら1256のボックス+346ボックスの30点かな。1256は基本形として、そこに346のボックスを追加したい。634(ムサシ)の語呂で何度か買ったこともある(当たったことはない)し、何となくきそうな出目だから。今度やってみよう!