日暮れて道遠し

博打のこと、借金のこと、その他いろいろ

ストーンズの最初に買ったアルバムが「ダーティ・ワーク」だった。危ないところだった。

1986年に発売されたローリング・ストーンズのアルバム「ダーティ・ワーク」は、全英・全米とも4位を記録しており、セールス面では一定の実績を残しているが、ファンからも批評家からも厳しい評価を受けているアルバムで、ストーンズの全作品中、最低と言われることもある。

当時、私は17歳、洋楽を聴きだして3年ほどの頃で、今のようにスマホのサブスクでいくらでも曲が聴ける環境にはなく、音楽を聴くためにはCDを借りたり買ったりしなくてはならず、聞きたいと思っているアルバムがあっても金が無ければ聞けないところ、中学生の私は月にせいぜい数枚のアルバムを聴くことしかできなかった。

そういえば、ビートルズの公式CD化がその翌年の1987年で、当然CDなど買う金はないから、その時はラジオでリリースされたCDを流しているのをカセットに録ったのを覚えている。まあ、それくらい金が無い身では聞きたい曲は簡単には聞けなかったのだ。

よって、買ったり借りたりするCDも数は限られているところ、それまでストーンズのアルバムは1枚も聞いていなかった。もちろん、ストーンズの名前は知っていたし、「サティスファクション」だったり「黒く塗れ」や「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」などは聞いたことがあった。

洋楽を聴こうとする限りは、いずれは聞かなくてはいけないとは思っていたストーンズ。そんなストーンズのニュー・アルバムが出ると聞き、そして先行シングルである「ハーレム・シャッフル」のPVを見て(当時、テレビ朝日が深夜にMTVを流していた。)気に入り、大枚をはたいてアルバムを買った。

その最初に買ったストーンズのアルバムが、最低とも言われる「ダーティ・ワーク」だったのは皮肉なもの。アマゾンのレビューなどでも「傑作」であったり「好き」という批評もあるが、やっぱり私は通して聞いて、ストーンズなんてこんなものかと思った。

ただ、シングル「ハーレム・シャッフル」は今でも好きなのだが、ストーンズのオリジナルではなく、カヴァーだったのも後で知った。唯一、アルバムで好きになった曲がカヴァーとは…。まあ、それも悪くはないのだが、それらを含めて、私の中ではストーンズは取り立てて聞きたいバンドとはならなかった。危ないところである。

その数年後、働きだして少し自由なお金ができるようになり、CDを買いだすようになった。もちろん、日本の2,800円とか3,200円とかする高いのではなく、TOWER RECORDの2,000円位の輸入盤である。そこでジャケットにつられて「スティッキー・フィンガーズ」を買った。

聞いたことのある人には言うまでもないが、「ダーティ・ワーク」とは比べ物にならない程のデキ。1曲目の「ブラウン・シュガー」のイントロのギター・リフ。これだけで極上だが、続く「スウェイ」これがまた大好きな曲で、この曲なんかはストーンズ以外のバンドがやっても何にもならないだろう。

そこから続く「ワイルド・ホース」「キャン・ユー・ヒア・ミー・ノッキング」「ユー・ガッタ・ムーブ」というA面は、世界最強のA面。そして、A面最後の「ユー・ガッタ・ムーブ」で昇天しかかったところに始まるB面の1曲目「ビッチ」。

続く「アイ・ガット・ザ・ブルース」「シスター・モーフィン」「デッド・フラワーズ」あたりはA面程の躍動感はないが、目いっぱいストーンズに浸ることができる。これぞストーンズ。最後の「ムーンライト・マイル」が流れる頃には、いつも「ああ、もう終わってしまうのか」と思いながら聞いていた。


その後、「ベガーズ・バンケット」「レット・イット・ブリード」「メイン・ストリートのならず者」という黄金期のアルバムを聴いていた頃は本当に幸せだった。どのアルバムもとにかく素晴らしい。この4枚がストーンズの最高傑作と言われているが、本当にこれほど充実した時代を過ごしたバンドは他にない。

やっぱり、1枚のアルバムで決めつけてはいけない。という話である。

【中古】 スティッキー・フィンガーズ(SHM−CD)/ザ・ローリング・ストーンズ

価格:1089円
(2025/5/26 04:39時点)
感想(0件)