日暮れて道遠し

博打のこと、借金のこと、その他いろいろ

手塚治虫の火の鳥「黎明編」「未来編」「ヤマト編、異形編」「鳳凰編」「復活・羽衣編」を読んだ。

手塚治虫のライフワークであり、後世の漫画家に多大な影響を及ぼした、日本漫画史に燦然と輝く最高傑作「火の鳥」は、1954年「漫画少年」に「黎明編」が書かれたのを始まりに、掲載誌を転々としながら、1986年小説誌「野性時代」に連載された「太陽編」が最後となった。

掲載誌は5誌に及んだが、そのうち「漫画少年」、「COM」、「マンガ少年」がいずれも休刊となったことから、「火の鳥」が連頼されると雑誌がつぶれるなどというジンクスがあったという。

私は既に全巻数回読んでいるが、今また何度目かの読み直し作業に入っているところである。読んでいるのは角川文庫版という文庫本サイズの小さな漫画本で、黎明編に始まりギリシャ・ローマ編で終わる全13巻となっている。

そして、第1巻「黎明編」、第2巻「未来編」、第3巻「ヤマト・異形編」、第4巻「鳳凰編」、第5巻「復活・羽衣編」までを読み終えた。

この「火の鳥」は、過去、未来、過去、未来と交互に繰り返し、さらに後にいく毎に現代に近づき、最後は「現代」で終わるという構想で、最後の「現代」は、「自分の体から魂が離れる時」(未来が無く過去しかない=現代)とし、死ぬ直前に一コマだけの物語として描くつもりだったという話もある。

現在、いくつかの出版社から全巻セットが発売されているが、執筆順に収録されているものはない。当然、私の読んでいる角川文庫版も執筆順でないため、過去、未来、過去、未来と交互になってはいない。ただ、作品自体が輪廻を繰り返す構成であるなど、読む順番はこだわる必要はなさそうなところではある。

この単行本は、以下、望郷編、乱世編、宇宙・生命編、太陽編、ギリシャ・ローマ編と続くのであるが、ネットなどで調べてみると、「未来編」「鳳凰編」の二つが人気が高く、次に「太陽編」「宇宙編」「復活編」あたりが続くようだ

私が順位をつけるなら1位は「鳳凰編」で、これはネットでも最高傑作との声が高く、私もダントツで1位をつける。「我王」というあまりに強烈なキャラクターと、ライバルとなる「茜丸」との人間ドラマは他を圧倒する熱量で、「火の鳥」の核となる「生命」や「輪廻」というテーマとは少し遠いエピソードではあるが、いつまで経っても何度も読み返したくなる。

2位もベタで申し訳ないが「未来編」で、学生の頃にこれを読んで死生観が変わった。「不死」ほど怖いものはないと思った。そして「不死」となった人間が生物の滅びた地球で「神」となり、新たな地球史を作る。核戦争後を書いた話はいくつもあるが、その中でも最も壮大で最も崇高な話。これも何度も読んでいる。大傑作だと思う。

3位は「異形編」である。SFチックな話の構成もいいし、八百比丘尼が治療する妖怪たちの姿が鮮烈で、目に焼き付いていっときは離れなかった。最初のカミナリを表現したページなども含めて、手塚治虫の筆が最もノッていた頃ではないだろうか。修正前は妖怪ではなく宇宙人だったそうだが、その版も見た覚えがある。これは短編に近く短い話だが、このページ数でここまでテーマをうまく捌(さば)けるのも凄い。

ほかにもトラウマになりそうな「宇宙編」や、クローン技術がテーマとなる「生命編」など、私のベスト3には入らなくとも、一般レベルからいったら傑作揃いで、漫画好きなら当然、そうでなくとも読むべき作品群である。

評価は…99点!100点にしないのは、私のあと20年?程の人生において、これを超える作品が出るのを期待し、100点を空けておくからである。

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